• 豆知識

矯正治療について②

 前回に引き続き、矯正の話をしたいと思います。前回は矯正の方法では針金とマウスピースがあるということ、そして、マウスピースがこれから全盛期を迎えるだろうというお話をしました。今後、マウスピースがさらにどこまで発展していくのか、というところになるでしょう。とは言いましても、やはりまだ針金が必要な方もいます。ただ、針金の需要は落ち込んできているとも感じています。患者様目線でいうと、針金矯正のメリットは全くないのではと思います。針金矯正を選ぶに際しては、歯科医師側としての技術的な面から、針金がいいと思うケースでは針金を使っている、ということになります。どちらでもできるというケースであれば、やはりこれからの時代は、マウスピース矯正ということになってくると思います。あとは、パターンの選び方でしょうか。以前少しお話ししましたが、4番目の歯を4本抜かなければいけない場合は、私は針金矯正のほうがメリットがあるのではないかと思っています。もちろん、インビザライン、マウスピース矯正をする先生もいらっしゃいますが、同じ歯並びを治すのであれば、基本的には針金矯正のほうが、やはり治るのが早かったりします。抜歯をしないケースに関しても、マウスピース矯正では時間がかかる場合もあります。マウスピース矯正には、見た目を重視している矯正のやり方、というイメージがあります。

 透明なマウスピース矯正を扱っているメーカーで一番有名なのが、アメリカのインビザライン社で、大きくシェアを占めています。今はインビザラインに対抗するメーカーも数多く出てきつつありますので、今後、インビザラインがナンバーワンを走り続けるのかどうなのか、というところになっています。しかし、かみ合わせを最後に細かく治したいというときは、針金矯正がベストです。ただし、歯科医師側からしても、マウスピース矯正のほうが少し楽な部分もあったりするので、その辺りの使い分けというのは、一人ひとりの歯並びによって変わってくるのかなと思っています。

 針金矯正とマウスピース矯正を、途中で併用することもあります。針金とマウスピース、それぞれの長所を上手に使っていければ、一番いいのではないかと考えています。針金を使う期間をできる限り短くするようなことも可能です。例えば、今まででしたら、2年間針金矯正だったのを、針金を半年ぐらいにして、あとはマウスピースの矯正で治療できる場合もあります。最初にかなり強い力で動かすのは、強い力が適している針金を使い、そのあとの整える段階に関してはマウスピースを使っていく、またその逆もあります。さまざまなパターンがあり、昔と比べると格段に融通がきくようになっています。

 歯のかみ合わせが悪いと、さまざまな影響が出るのではないか、という話もある中で、では、矯正の治療は何歳までできるのかということも気になりますよね。年齢に関しましては、昔は40~50歳まで、もしくは歯周病が進む年齢層になるとNGであるという時代もありました。もちろん、今でも、重度の歯周病で歯がぐらぐらしている方は、当然矯正すると抜けるリスクが高くなるので、やめたほうがいいと思いますが、基本的には年齢による制限はありません。歯周病の中等度以上になっている歯がある場合は、その歯を動かすと、矯正が終わる2年後ぐらいには、ぐらぐら感が強くなってしまい、抜かなければならないことも考えられるので、矯正するときには要注意となります。そのような状況を除けば、年齢が80歳だからできないということはないのです。自分の歯が歯周病なども進んでおらず、しっかり、きちんとがっちりしていたら、何歳であろうと矯正はできるということです。

 虫歯がある場合は、虫歯を治してからの矯正になります。例えば大きい虫歯で、神経を取ったり、かぶせ物をするケースですと、その最終段階の一歩手前まで、いわゆる仮歯まで完了したあとに、矯正をします。そして矯正終了後に、最後のかぶせ物をかぶせる、という方法をとります。理由はいろいろあるのですが、最後のかぶせ物のところで、保険適用であれば銀歯、保険外でしたらセラミックなどを使用しますけれど、それらは基本的に矯正に使用するブラケットがつきにくいのですね。ですので仮歯まで完了してから、歯にブラケットをつけて動かしてみる、最後にかぶせ物をかぶせる、ということになります。もちろん、矯正は歯の角度も治していきます。最後にかぶせ物を修正するとしたら、かぶせたあとにきれいに仕上げたほうが、さらに完成度は高くなると思いますので、矯正の難易度が下がるという、その辺は順番をいろいろやりながら進めていきます。改めて申し上げますと、歯の矯正には、歯周病の度合いは大事ですが、年齢制限については特にありません。