• 豆知識

噛み合わせによる悪影響について

 前回は矯正についてお話ししました。マウスピース、針金などさまざまな方法があるということ、また、矯正には年齢制限はあるのかについても触れましたね。歯周病などで骨が痩せていないかどうか、は非常に大事ですが、年齢制限はありません、ということでした。歯の矯正は、見た目もしくはかみ合わせ、どちらかの理由で矯正します。かみ合わせが悪く、かみ合わせたときに右にずれていたりすると、例えば顎が痛くなったり、パキパキ音が鳴ったりして、顎関節症になったりします。あとは不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれる、なにかよく分からない症状がいろいろ出たりします。

 これは科学的に解明されているわけではありませんが、一説によるとかみ合わせが悪いと、顎も悪くなるし、その結果首の骨がずれたり、腰椎がずれて腰痛になったり、首が痛かったり、ポキポキ鳴ったり、さらには筋肉の位置がずれるから片頭痛が起こりやすかったり、そこからめまい、立ちくらみ、鼻水、鼻づまりなどが症状として出てきたりする、と言われています。このように、原因が定かではないけれど、なにかよく分からない自覚症状が出ることを、まとめて不定愁訴といいます。実際、かみ合わせが影響しているのではと思うケースも多々ありますね。例えば、きちんとした銀歯や金歯を入れたら、これらの不快な症状もよくなりました、と患者様から言われるときにはそう思います。決してその症状を治すためにしている治療ではないのですが、かみ合わせを治したら、患者様から不快な症状がなくなったという話を伺い、実感することがあります。かみ合わせが悪いと、腰痛などの、全く歯と関係ない、しかも場所的にも遠い部位にも影響が出ている、ということになりますでしょうか。しかし、これもいろいろな学説があります。その中には、全く無関係である、とする学会論文もあります。どちらも賛否両論ありますけれど、私の主観としては、経験上あるような気がします。

 例えば、通常より大きい銀歯を入れたりしたら、3日後には首が痛いなどの不調で来院されます。それが、大きすぎる仮歯のせいなのかどうかは別ですが、ぴったりとしたサイズにしたら、症状も戻りますので、なんとなく、そこに相関性を感じています。仮歯の高さを見ながら調整するために、最初は少し高めから始めて、仕上げていくことなどもありますので、そのときにこのような症状が出る方がいらっしゃいました。かみ合わせはやはり大事です。あくまで主観ですが、かみ合せと体のなにかしらの不調には、相関性があると思います。

 かみ合わせに関しての治療方法は、大きく分けて三つあります。最初にすることは、その三つの治療方法の前に、本当にかみ合わせが悪いのか確認することから始めます。結果、かみ合わせが悪いとなった場合、どのかみ合わせが正しいのかを見るために、確認にはマウスピース脱着式を使用します。以前お話しした、矯正用のマウスピースではありません。歯科医によっていろいろなタイプがありますが、私は、主に下の奥歯にはめるタイプを使用してします。それを口にはめた状態で、ミリ単位で調整しながら高さを上げたりします。マウスピースをはめて、多少調整した状態で、「なにかがよくなっている」と患者様が実感されていれば、その患者様にとって、かみ合わせをもっと改善する余地があるということが分かるわけです。「なにかがよくなっている」ということは、かみ合わせを触る必要性があるわけですし、触ったほうがいいとなった場合は、どこの位置でかみ合わせをつくるか、今かんでいる位置より0.1ミリ高くするのか、0.3ミリ高くするのか、見極めていかないとなりません。

 マウスピースでそれがどこの位置なのかを見ていくことになります。最初にこの確認をして位置が大体分かったら、そこで初めて、三つの治療法に分かれていきます。もちろん、この時点で、全然かみ合わせは関係なかったという方もいらっしゃいます。いろいろかみ合わせを試してみたけど、その方にとっては自覚症状もなく、なにも変わらなかったとしたら、かみ合わせがそもそも悪いわけではない、ということが分かった、となります。実際やってみると、多くの方が、なにかしらのいい効果が出ています。患者様の主観となりますが、自覚症状として、とても楽になりましたとおっしゃる方が多いと感じています。

 では、次回では、症状がよくなったと感じた場合、それからどうするのかをお話しましょう。