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歯の神経特集

 前回は、神経を抜いた歯の中がきれいになってるかどうかを、においで確認することがある、というお話でした。今回は歯の神経についてお話しします。

 銀歯をつけてる歯に段差がある場合、そこから虫歯が侵食した結果、神経の治療が必要になることが往々にしてあります。よくあるパターンとしましては、昔治療した銀歯の部分が虫歯になる、二次虫歯になった場合です。銀歯の間や銀歯の中が少し虫歯になるとします。実はその歯は神経に到達するまで、もう既に1ミリも余裕がありません。といいますのも、5年前、10年前に銀歯の治療をした時点で、既に神経にいくまで1ミリもない状態になっているからです。銀歯をかぶせてからしばらくたつと、第二象牙質という新しい歯が中にできるにはできます。しかし既に神経に近い場所ですので、少しでも銀歯の間が虫歯になった場合、いきなり神経に触ったりすることになるわけです。ですから、銀歯に段差があるだけだと思って銀歯を開けたら、もう神経にいっていました、ということも多いのです。

 ちょっとしみだしてきたなと思ったら、割と早い段階で痛みになってしまいますので、このようなことを防ぐためにも、ぜひ定期健診に行くことをお勧めします。また、歯のクリーニングを行ったあとの歯科医師の視診だけで、この虫歯は発見することは難しいです。基準は別にありませんが、1年に1回はレントゲンを撮り、しっかりと中も確認したほうがいいと思います。黒い影ができてきていることは、どうしてもありますが、それは視診で分かるものではありません。

 近年、放射線は大丈夫だろうかという議論が一時期流行りましたが、昔の歯科医のレントゲンに比べて、今のレントゲンは10分の1程度の放射線量になっています。通常撮られます、すべての歯が映るレントゲンは、ハワイ旅行に1回行くときに飛行機搭乗の際に浴びる、自然から受ける放射線と変わらない程度の量と言われています。加えて、歯科医でレントゲンを撮る際は、防護用のエプロンもつけますし、害というものは限りなく低いものですので、安心なさってよろしいかと思います。保険治療的にも、半年たっていれば撮っていいという目安もあります。半年に1回というスパンで行うかどうか、そこは各歯科医師の判断となりますが、銀歯の下に関しては、ぜひレントゲンを撮っていただき、確認しておいたほうがいいと思います。

 私も開業して11年になりますが、何度か「またレントゲン撮るんですか」というご質問を受けたことがあり、同じような説明をしています。定期健診に行かれていても、少し歯周病が進んでいる方、毎回プラークが多いという方については、半年から1年の間隔で撮ったほうが、悪くなり始める前に把握しやすいのです。われわれ歯科医師が最も防ぎたいことは、せっかく定期健診にきていただいているのに、神経までいく虫歯があった、という状況まで見つけられなかった、ということです。われわれも悔しいですし、なにより通院されている方が、定期健診にきていたのになぜ、となってしまうと思います。やはりこれは防いでいきたいと願っています。

 そのためにも、定期的なレントゲンは大事です。歯の根っこの治療に関しましては、歯科医師を対象にした講習会でも、何十時間もあるほどのタイトルになります。ぜひ一般の方にも知っていただきたい内容です。