• 豆知識

Q,歯周病

 前回、歯茎がなぜ下がるのかというお話をしました。歯茎が下がる原因では三つ考えられます。一つ目が歯周病、二つ目が硬い歯ブラシで力を入れて磨いてしまっていること、三つ目がかみ合わせで、そのうちのどれかということは、自分では判断がつきません。口腔内が崩壊していく虫歯や、歯周病になる原因については、炎症と力のコントロールなどとも言いますが、われわれ歯科医師にとっても、見分けることが非常に重要になります。細菌によって引き起こされる炎症で悪くなっているのか、かみ合わせや咬合力、筋力など、そういったものが原因となっているのか、という見分けが非常に難しいのです。汚れが多く付着している場合の歯周病であれば、それはもう完全に、菌と炎症が原因なので、よく磨きましょうという話になりますが、微妙なとき、磨き残しによる歯周病、いわゆるペリオというものなのか、力、いわゆるフォースによるものなのか、分からない難しいところなので、やはりお近くの歯科医を受診いただき、お尋ねいただくことがベストではないでしょうか。

 歯周病に、老化が関係しているのか、子どもは罹患するのかというご質問があります。
一応、若年性と呼ばれる、小さい年齢でも歯周病菌が存在することはあるとは言われていますが、いわゆる歯周病菌に罹患して発症となるのは、やはり20歳前後からと言われています。つまり20歳前後から可能性があるということです。歯周病菌は、口腔常在菌、つまり口の中に常にある菌になります。常に口中に存在していますが、悪い影響をもたらす量まで増加したり、酸性になるまで放置しているかどうかが問題なのです。健康な口内では、何十億もの菌が常在していたとしても、歯磨きをすることによって、寛解(かんかい)というレベル、骨を溶かす程じゃない状態で落ち着いていることで、歯周病が進んではいません。体の免疫力が落ちる、あるいは汚れが増える、菌が植える、寛解である状態の許容量を突破したときに骨が減っていき、歯周病という現象になって現れてきます。歯茎が下がったという症状は、目に見えた結果なのです。その前に歯周病は、口中で進行しているわけなのです。このようなことからも、歯磨きは大事ということが分かります。子どもに関しては、同じような現象ですと歯肉炎があります。歯茎が腫れるという症状が進んでいることがほとんどです。決して歯周病にならないわけではないのですが、罹患するのは一部の方ぐらいです。

 1度下がった歯茎が元に戻るかというご質問も受けますが、残念なことにほとんど戻りません。1度進行してしまうと元に戻りませんので、できる限り進行速度を遅くする治療となります。歯周病ケアで歯石取り、歯茎の中の膿取り、ぶよぶよ取りをするのですが、それで完治し、元の状態に戻るわけではないのです。それ以上進まないようにするための治療であり、ゼロにはならなくても、可能な限りゼロに近づけ、80歳、90歳になるまで歯が抜けないようにする、ゼロにはならなくても、ほぼゼロにするために行われるのが、歯周病治療となります。歯茎は1回下がると元に戻りません。歯の周りの4分の1ぐらいだけの骨が減った歯周病に関しては、再生治療なども可能ですが、いわゆる歯周病で全体的に骨がなくなっていってる方に関しては、再生治療もなかなか難しくなります。ですので、下がらないようにすることが大事なのです。われわれがよく使う例えですが、風邪は治るが、糖尿病やリウマチは、1度罹患すると、ゼロに戻すことはできないですよね。歯周病というのは、それと同じなのです。

 以上を踏まえても、やはり、予防歯科、口腔衛生、定期健診などは非常に大事になってきます。また、今では歯周病安定期治療という、急性化していない状態での歯周病治療を、多くの歯科医院で取り入れられています。繰り返しになりますが、1度下がった歯茎は戻りません。悪くなる前に、お近くの歯科医院での定期的なケアを選択することが、極めて大切です。