• 豆知識

7月放送分の感想(親知らずについて)

 前回、親知らずについて、まっすぐ生えていて問題なければ、抜く必要はないというお話しをしました。まっすぐ生えていて、かんでみたときに上の歯と咬合が合っている、手前の歯に悪影響がない、つまり角度が普通である、そして、歯肉にかぶっていなければ抜く必要はありません。これには賛否両論がありますので、さまざまな状況を鑑み、結果抜歯するということは、各歯科医の判断でそれぞれが正解だと思います。つまり、一般的なセオリーとしては、きちんとかみ合わせがなされていたら、抜かなくてもいいのではないかということですが、きちんとかんでいるという状態を、どのレベルに置くかによって、各歯科医師ごとに判断が分かれるであろう、ということです。ちなみに、親知らずというネーミングの由来は、20歳ぐらいに親が知らないうちに生えますので、「親知らず」です。まさに文字通りで面白いですね。

 下側の親知らずを抜くと小顔になる、という話を聞いたことがありませんか。経験論としては、少し顎の角度がすっきりとするイメージがあります。ただ、学術的に正しい、文献や論文で発表されているかどうかは、確認できていません。歯科医師としての臨床主観に基づくのであれば、小顔になっているのではと思います。

 歯の根っこがはまり込む顎骨の穴である歯槽を構成している骨を、歯槽骨(しそうこつ)といいます。 この歯槽骨によって歯は支えられており、骨は歯に接合しています。つまり、歯がなくなると、次第に痩せていくことになります。高齢の方が使用される入れ歯も、もし顎の形がずっとそのままであるならば、一生1つの入れ歯で大丈夫ではないでしょうか。しかし実際は、半年から2~3年でつくり替えていくことが多いです。なぜならば、顎がどんどん減っているからなのです。歯がないことで、直接かみ合わせ力がかからないため、骨吸収、特に最初の半年からぐんぐん吸収されていき、結果、とても細くなってしまいます。

 全部歯がある方でも、1本歯がなくなり、両サイドの歯を削って大きな義歯を入れるブリッジをしたとします。真ん中の部分には、見た目上の歯はあっても、実際の歯がない状態になります。根っこがないわけです。すると、根っこの部分の歯茎にはかみ合わせ力がかからないことになり、2~3年経過すると、その部分だけ落ち込んでいきます。使わない筋肉が痩せていくのと同じ理由で、かみ合わせ力がないと、どんどん骨がなくなっていきます。ということから、私の主観ではありますが、親知らずの抜歯部分も、もともと骨があった部分がなくなることで、減少しているのではないか、と思っています。

 また、矯正をされる方にも同じ理由で小顔になった感じがする場合はあります。矯正の処置の際、4番目の歯を4本抜く方がいます。4番目の歯を4本抜いて、針金などで矯正を行いますが、理論上は別に4番目の歯を抜いても、もともとあった歯をそこに並べるだけですので、顔の輪郭は変わらないと予想されます。しかし、やはり小顔になった気がするのです。計測をしたわけではありませんので、詳細なデータとしては持っていませんが、術前術後の顔つきを比べると、かなりすっきりとした顔つきに感じられます。

 親知らずを抜けば小顔になる、に関しては、私の主観としては、なっている気がします。