• 豆知識

マウスピース矯正について

 今回は、かみ合わせに関しての治療方法で、大きく分けると三つある、というお話しです。相関関係についての解明はまだなされていませんが、歯のかみ合わせが悪いと腰痛が起きたり、片頭痛になった、といったお話を聞くことがありますので、可能性としてはゼロではないと思っています。かみ合わせに関しては、前回お話ししました通り、まずはマウスピースをはめてみて、かみ合わせがずれているのかを診てもらうことから始まります。診断をして、正しい位置を発見できれば、あとはそこの位置にどう治していくかということになり、その方法が大きく分けて三つあるということですね。


 一つ目は、そのマウスピースをずっと使い続ける、という方法です。これは簡単な話で、患者様にとっては、そのマウスピースをつけたかみ合わせのほうがいいわけですから、そのマウスピースを使い続けるという選択があります。もちろん、この方法を選択する方はほとんどいらっしゃいません。しかし、あとの二つの方法が面倒くさいからということで、たまに、このマウスピースを使い続ける方法をとる方も、実際いらっしゃいます。われわれ歯科医が第一選択としてお勧めする方法ではありませんが、使い続ける場合は、1カ月に1回程度、高さ調整をしながら、当たる場所を調整して過ごしていただくことになります。ちなみに顎関節症の方であれば、しばらく使っていたら、ある程度症状が消えたりしますので、そのあとマウスピースを外して、数年間、なんの症状も出ないということがあります。

 二つ目は矯正です。矯正治療で、正しい位置にかみ合わせをもっていく方法です。矯正は歯並びを触るので、かみ合わせもなんでも触ることになります。針金、あるいはマウスピースを使います。ただ、矯正でかみ合わせのコンマ何ミリを合わせていくのは、本当に至難の業で、完璧にかみ合わせを合わせられるのは、実際はほんの一握りの先生だけではないかと思います。もちろんほとんどはその位置にもっていけるのですが、かみ合わせの細部に至る部分は、まさしくコンマ何ミリの世界です。それを矯正治療だけで、すべて完璧にできるかといわれると、そこまでは難しいと思います。もちろん、できる先生も日本の中にいらっしゃるとは思いますが、非常に難しいと思います。矯正したあとで、かみ合わせの調整を研磨させていただくことを前提として、私なら治療します。

 三つ目はかぶせ物、詰め物をやり替えて、理想的な位置にしていく方法です。これが一番多いと思いますね。かみ合わせが狂っている方の多くは、自分の歯が多い方というよりは、年を重ねて、複数の歯科医院でいろいろな銀歯をつくっている場合が多いです。右はあちらの歯科医院、左はこちらの歯科医院としているうちに、かみ合わせが狂っていったということですね。それを、1回きちんと整えて、かみ合わせの平面をつくると治る、という感じでしょうか。複数の歯科医に通っていたら、やはりそれぞれでばらばらに調整しますし、銀歯なども入れてから5年10年すると、すり減ってきますので、そもそも薄くなってきています。ということは、かみ合わせが落ちていっていることになりますので、それをきちんと元の高さに復元してあげる、上下左右を1箇所の歯科医院でつくってあげる、ということが必要になります。頭蓋骨を基準とし、それに下の顎をいい位置にかませていく方法が、個人的には理想なのかなと考えていますが、真逆の先生もいらっしゃいます。これに関しては、細かい手法の話ですので、どちらでも大丈夫です。

 以上の三つの方法でかみ合わせを治していくことになります。三つ目がよくとられる方法です。もしかみ合わせが気になってきたとき、そういえば右は20年前にあちらの歯科医院、左は5年前にこちらの歯科医院で治したな、と思い当たる方がいらっしゃれば、1箇所の歯科医院で診てもらうことを検討してください。原因を治療できることで、生活ががらっと変わったりすることもあると思います。ぜひお近くの歯科医院で診ていただくことをお勧めします。