虫歯を放置したらどうなるのか
日本人の「歯医者嫌い」は有名な話ですよね。歯科治療に伴う痛みなどが原因で、歯医者が嫌いになってしまう人が沢山いらっしゃいます。それだけに、本当に我慢ができなくなるまで、虫歯を放置する人も珍しくはありません。ただ、どんな病気もそうですが、病状が進行するほど治療が難しくなりますので、そういった傾向はあまり好ましいものではありません。ここでは虫歯を放置した場合に、どのようなことが起こるのかについて詳しく解説します。
- 虫歯は自然治らない?
風邪などの病気は、多少熱があったり、鼻水が出ていたりしても、放置することで自然に治ることがあります。むしろ、病院を受診して薬を飲むことを良いと思わない人もいらっしゃるくらいです。確かに、私たちの体には病原体に対する免疫力が存在していますので、自然に治せるのであればそれに越したことはありません。けれども、虫歯となると話は変わります。なぜなら虫歯という病気は、基本的に自然治癒しないからです。
- 虫歯は進行し続ける病気
例えば、奥歯に虫歯が発生したとしましょう。そこには、ミュータンス菌などの虫歯菌が感染し、増殖を繰り返したり、生命活動を営んだりしています。そうした活動が一度始まってしまうと、放置することで消えてなくなることはあり得ないのです。一生懸命歯磨きをしていれば、虫歯菌や虫歯の病巣も取り除けると思いがちですが、それは不可能です。
- 虫歯の進行速度を抑えることはできる
虫歯が発生したら、治療をしなければ完治させることは不可能ですが、進行速度を抑えることは可能です。具体的には、徹底したブラッシングを行い、虫歯菌のエサとなる糖質の摂取を断つことで、虫歯の進行速度を抑えることができます。ただ、現実問題として、そうした取り組みを継続することは難しく、やがては進行速度も速まっていきます。何より、そうした取り組みができるのであれば、歯科を受診して、早期に治療を受けた方が賢明と言えます。
- 放置することによる虫歯の変化
虫歯は放置すればするほど、病状が悪化していきます。エナメル質が溶け、病巣が象牙質まで到達すると、病気の進行はさらに速まります。歯の神経である歯髄にまで到達すると、抜髄を行う必要がでてきます。抜髄とは、歯の神経を抜くことで、その結果、歯への血液供給なども滞り、歯質の脆弱化へとつながっていくのです。これは歯の寿命を縮めることと同じ意味です。さらに虫歯が進行すると、歯の根っこにまで虫歯菌が及び、歯根もボロボロになります。そして最終的には、歯を丸ごと失うこととなるのです。
- 周りの歯にも虫歯がうつる
虫歯は虫歯菌による感染症ですので、放置し続けると、虫歯にかかった歯そのものを失うだけでなく、隣の歯にも感染が広がることが多々あります。虫歯が原因で来院される患者さんには、レントゲンで歯の状態を確認してもらうことが多いのですが、画像から隣の歯への虫歯の広がりを認めることが珍しくないのです。また、虫歯が重症化すると歯茎の病気を引き起こす要因にもなりますので、治療せず放置することは口腔内全体の健康にも関わってきます。
- 自然に治る虫歯もある?
ここまで、虫歯は自然治癒しない病気で、放置することはとにかくいけないことであると説明してきましたが、実は積極的な治療をせずとも自然に治る虫歯もあります。それは初期の虫歯です。発生して間もない虫歯は、再石灰化という現象が期待できるため、すぐに削ることはしません。それでもやはり、歯科医院でのフッ化物塗布や歯科医師による経過観察が必要となりますので、放置して良いといことにはなりませんので注意しましょう。