歯がボロボロになっても安心して治療を
目次
歯がボロボロになってしまった方へ
虫歯は早期発見、早期治療が大切ですが、虫歯を放置したり、治療を途中でやめてしまったりして、歯がボロボロになってしまっている方がいます。そうした中には、歯科医院で嫌な思いや不快な気分を味わったことが原因で通院をためらっている方もいます。
こうした方が歯科医院になかなか行けない理由はさまざまです。主なものを挙げると、次のようなものでしょう。
・以前通っていた歯科医院での治療に納得がいかなかった
・説明もなく、いきなり歯を削られた経験がある
・治療のときの痛みや器具の機械音が苦手
・治療代が高くつきそう
こうした苦手意識や不信感の原因は、多くの場合、歯科医師側にあります。事前に十分なヒアリングを行わず、治療についての説明もないままに治療を始めてしまうので、患者さんは「思っていた治療と違う」と不信感を抱くのです。
私たちは、このようなことがないよう、治療前には十分なヒアリングとカウンセリングを行います。患者さんから歯の状態や気になる点などをよく聞いたうえで、治療計画を作成します。もちろん、計画には患者さんの希望を反映し、しっかり内容を理解していただきます。
歯がボロボロでも不安なく治療を受けてもらう これが私たちの願いです
虫歯の治療をやめてしまったり、虫歯を長年放置したりしてしまったために歯がボロボロになってしまった、という患者さんは少なくありません。虫歯は早期発見、早期治療が大切なのですが、歯がボロボロになってしまう人は、「虫歯治療は痛くて我慢できない」「歯を削る音が苦手」「麻酔を打たれたくない」などと歯科医院に苦手意識を持っているものです。「こんなになるまで放っておいたら、治療のときに叱られるのではないか」と不安な患者さんもいるでしょう。
しかし、最近は治療技術や器具の進歩によって痛みはかなり抑えられるようになってきました。昔と違って、患者さんにできるだけ痛みを感じることなく治療を受けてもらうことに腐心する歯科医師も増えています。
私たちも、患者さんにはできるだけ歯科治療で痛みや不快な思いを感じてほしくないとの思いで日々治療に当たっています。
歯がボロボロになってしまった患者さんでも痛みや苦痛、不快を感じずに治療を受けられるようにするために、私たちが取り組んでいることを紹介します。
ボロボロになった歯でも無理のない治療計画を
虫歯の治療が苦手というわけではないけれど、口の中を見られるのが恥ずかしい、という患者さんもいます。特段、歯がボロボロになっているわけではないのに、虫歯ができていたり、歯石がたまっていたりしたら恥ずかしいと思うようです。
しかし、私たちは毎日、数多くの患者さんの口の中を診ており、どのような状態であっても、一喜一憂することはありませんし、それで人柄を判断することもありません。どんな方でも、口の中に多少のトラブルは抱えているものです。
私たちは、それを正確に把握し、健康を取り戻し、健康を維持するためにどうすればいいのかを考えることに集中しています。
歯科医院に来られる方の多くは、虫歯で歯が痛んだり、入れ歯が合わなくなったりと悩みを抱えています。私たちは、勇気を出して来院された患者さんの悩みを解消するために全力を尽くすだけなのです。
たとえ、歯がボロボロな状態になっていたとしても、心配せずに安心してお越しください。歯や口の中に関することなら何でも相談に乗ります。
ボロボロな状態になった歯の治療は、たいていの場合、1日では終わりません。歯の中の状態や治療方針にもよりますが、数カ月間、定期的に通院していただかなければならないこともあります。根気が必要な治療となりますので、無理のない治療計画を立て、歯と口の中の健康を取り戻すため、できるかぎりの治療とサポートをしていきます。
また、歯がボロボロになっている方は、虫歯があるだけでなく、歯周病で歯茎の状態も著しく悪い状態になっていることがあります。歯周病が悪化すると、最悪の場合、歯が抜け落ちてしまいます。早めに治療を受けましょう。
歯がボロボロになってしまうと、他人に歯を見られたくなくて、笑顔を見せなくなる人もいます。そうなると、食事もおいしく食べられませんし、鏡を見ると憂鬱になります。歯がボロボロだと生活の質まで落ちてしまうのです。
歯や口の中の健康で気になる点があれば、遠慮せずにご相談ください。
治療についての説明を明確に
歯科治療は、歯を削ったり抜いたり、麻酔注射を打ったりと、外科手術に似た部分があります。実際、親知らずの抜歯では全身麻酔での手術が必要なことがありますし、ひどい歯周病になると歯茎を切開することもあります。
しかし、昔の歯科治療では、患者さんに対する説明が十分に行われないまま、麻酔を打ったり、抜歯したりすることがありました。今ほど、治療法が進歩していない時代は、虫歯などの治療に時間や手間をかけられず、大きな虫歯は抜いたほうが治療も早く終わり、患者さんの負担が少ないという考えもあったようです。さすがに、今はそういうことはありませんが、患者さんが十分に説明の内容を理解しないまま、治療が進められていくことは皆無ではありません。それが原因で歯科医院が嫌いになったり、トラブルになったりした人もいるでしょう。
たとえ小さな虫歯でも、口の中に機器を入れられて、歯を削られるというのは嫌なものです。そのうえ痛みもあるのでは、患者さんも大変です。ですから治療の前には必ず、治療の目的や方法、所要時間、痛みを感じるなどのリスクについて患者さんに説明しておくことが大切です。痛みの程度や我慢しなければならない時間の目安を知っていれば、必要以上に不安になることはなく、落ち着いて治療を受けられます。
歯の健康を取り戻し明るい未来を
歯がボロボロになるまで放置してしまう患者さんの多くは、さまざまな理由で歯科治療が苦手だったり、恐怖心を抱いていたりする方たちです。そんな人たちが、勇気を出して来院してくれたのであれば、私たちも治療に最善を尽くし、全力で歯の健康維持をサポートします。私たちの喜びは、患者さんに歯の健康を取り戻してもらって、食事をおいしく食べ、気兼ねなく笑顔になってもらうことなのです。
しかし、患者さんにとっては、治療費の額や治療の進め方が気になることでしょう。そこで、治療費や治療の進め方の基本的な考え方について説明しましょう。
保険診療と自費治療で行う治療
治療には保険診療と自費診療があります。保険診療は、基本的に負担額は3割で、治療費を抑えられます。しかし、治療方法は制限されていて、使う素材も限られています。もちろん、それでも十分な治療はできますが、銀歯など治療の跡が目立ってしまいます。
自費診療は、素材や治療法を自由に選べますが、治療費は全額自己負担となり、同じ治療でも歯科医院によって費用が異なります。
治療を始める前に、保険診療にするか、自費診療にするかを決めておくことは大切で、治療計画も変わります。
私たちは治療前に患者さんに費用や仕上がりの違いなどもしっかり示しながら、十分に話し合い、納得のいく治療計画を立てます。
ボロボロになった歯の治療の進め方
1.
歯がボロボロになっている患者さんは、口の中の環境がかなり悪化しています。最初は、歯石を除去するなどして口の中を清掃し、清潔な状態にします。
2.
虫歯が悪化した歯は抜かなければならないかもしれません。しかし、私たちは汚染された神経を除去する「根管治療」を行い、できるだけ歯を残せるよう努力します。
また、歯周病が進行している可能性もあります。そのときは、基本的に歯周病の治療を優先します。歯周病は歯の土台となる歯茎やその下の顎の骨の病気です。まずは、しっかりと土台を安定させることが大切なのです。
3.
虫歯治療で歯に大きく穴を開けた後は、詰め物や被せ物で修復します。保険診療の場合、基本的に「銀歯」と呼ばれる合金を使いますが、条件によっては、セラミック製のものが認められる場合があります。抜歯した場合は、入れ歯や差し歯、ブリッジなどで機能を修復します。保険診療では素材や形状が限られます。
自費診療では、セラミック製の詰め物や被せ物、義歯などが自由に使えるため、治療の跡が目立ちません。セラミックにも種類があり、予算や特徴に応じて選べます。入れ歯も装着感にこだわることができ、インプラント治療も選択できます。
4.
治療後は再び、虫歯や歯周病などにならないよう、自宅でしっかりケアをしましょう。定期的に歯科医院へ行き、歯石の除去や歯のクリーニングをしてもらうことも大切です。どんなに良い治療を受けても、口の中の健康を保てなければ、意味がありません。例えば、高額なインプラント治療でも、その後のケアが悪ければ、インプラント周囲炎という病気になり、せっかくのインプラントが抜け落ちてしまうこともあります。
歯を削る音が苦手な患者さんには
歯科治療が苦手な理由として歯を削るときの音を挙げる人もいます。特に小さなお子様は「キーン」という高い音に泣き出してしまうこともあります。
キーンという音は、歯を削るために機器の先端を高速回転させたときに発生します。先端は空気が高速で取り込まれることで回転する仕組みになっていて、いわば風切り音のようなものです。最近は、低速で回転させることで音を抑えられる治療機器もあり、音も抑えられるようになりました。
ただ、機械で歯を削るわけですから、音が完全になくなるわけではなく、振動や多少の痛みまでは消えません。
ですから、なるべく歯を削らずに済む対策や、歯を削っても短時間で終わらせられる治療が大切です。そのために私たちは3つの対策に取り組んでいます。この対策には患者さんの協力も不可欠です。
1.そもそも虫歯にならないように定期健診でチェックする
2.虫歯が小さなうちに治療を行う
3.治療用の機器をできるだけ使わない
当たり前のことですが、虫歯にならなければ治療は必要ありませんし、虫歯が小さければ削る量も少なくなり治療時間も短くなります。ごく早期の虫歯であれば、削る必要はありません。
虫歯治療が怖いのなら、歯科医院に定期的に通って、歯の点検やケア指導を受けることが大切なのです。
麻酔が怖い患者さんには
歯の治療だけでなく、麻酔を注射されるのも嫌だという患者さんも少なくありません。治療内容によっては麻酔が欠かせませんが、歯を削る前から、麻酔で不快な思いをするのも患者さんにとっては嫌なものです。
私たちは麻酔のストレスを軽減するために、次のような対策を講じています。
1.歯茎に表面麻酔をする
歯茎に注射針が刺さるときの痛みを和らげるために表面麻酔を行います。塗り薬のような麻酔薬で、注射を打つ前に歯茎の表面に塗ります。唾液で薬剤が流れないよう、口の中に綿を詰めます。
2.細い麻酔針を使用する
注射針が細ければ痛みも感じにくくなります。「33G」というタイプの一番細い注射針を使用しています。
3.麻酔液の注入速度や温度を調節
歯茎に麻酔液が入るときの圧力も痛みの原因となります。このため、麻酔液を注入するときはゆっくりと注射器を押していくのが、痛みを抑えるコツです。温度も重要で、液が冷たいと痛みを感じます。体温に近い温度にまで温めることで痛みも和らぎます。
痛みの感じ方は人それぞれです。麻酔注射の痛みが不安なときは、遠慮せずに歯科医師に相談してください。
歯がボロボロになると治療はつらい?
虫歯が悪化し、歯がボロボロになったときに心配になるのは「痛くつらい治療を長期間続けなくてはならないのだろうか」「治療費はどれくらいになるのだろうか」ということではないでしょうか。
しかし、歯がボロボロだからと言って、一概に痛みが強いとは言えませんし、治療法も詳しく検査してみないと決められません。
治療費も、治療方法や使う材料によっても大きく変わります。銀歯の詰め物などを使う保険診療なら費用を抑えられますし、詰め物を目立たなく、きれいに仕上げたいのなら、自費診療でセラミックなどを使うことになります。
あれこれ悩んでいうちに虫歯は進行していきますし、費用を抑えたいのなら、治療を早く始めることが肝心です。カウンセリングなど患者さんへの説明を大切にしている歯科医院なら、予算も聞いたうえで治療方針を決めてくれます。
治療の痛みや治療費のことも、もちろん心配ですが、最も大切なのは納得のいく治療を受けられるかどうかです。特に「歯の治療が怖い」と思っているのなら、歯科医院選びは慎重に行う必要があります。患者さんの話をよく聞き、できる限り希望に沿った治療を行いたいと考えている歯科医院なら、痛みや治療費についても十分配慮してくれるはずです。
では、良い歯科医院を選ぶには、どのようなポイントに気を付ければいいのでしょうか。
歯科医院を選ぶポイントは?
良い歯科医院を選ぶポイントは、治療前によく話を聞いて、十分な説明をしてくれるかどうかです。多くの場合、診察台の上で話を聞かれますが、できればカウンセリングルームを用意している歯科医院がいいでしょう。
一番良くないのは、患者さんの話もよく聞かず、説明もないまま治療を進めてしまう歯科医院です。自分が気になることを尋ねることもできず、どのような治療が行われるのかも知らされないまま治療が行われるようでは、患者さんも不安になります。歯科治療に苦手意識があるのに、そのうえ、不安を抱かせるような治療では歯科医師を信頼して治療に臨むことができません。
治療では歯科医師と患者さんの信頼関係が欠かせません。治療の進め方に納得がいかず、疑問に感じるようなら、歯科医院を替えることも考えてみましょう。歯科医師によって患者さんへの接し方や治療に対する考え方は異なり、治療法が異なることもあります。保険の利かない自費診療であれば、なおさらです。
心配なことをすべて聞いてもらい、しっかり説明を受けたうえで、歯科医師を信頼できるかどうか判断しましょう。これが歯科医院選びで重要なポイントです。
歯科治療で痛みが心配な方は、笑気ガス(低濃度笑気吸入鎮静法)を使ってもらえる歯科医院を選ぶのも一つの方法です。笑気ガスとは20~40%の亜酸化窒素と80~60%の酸素を混合したガスで、吸入すると心地良い気分になって不安が和らぎ、痛みや刺激を感じにくくなります。
保険も適応され、副作用もほとんど報告されていません。すべての歯科医院で扱っているわけではないので、興味がある方は、治療前に笑気ガスを使ってもらえるか確認してみるといいでしょう。
歯科治療への不安や恐怖を克服するには
歯科治療への不安をやわらげ、恐怖心を克服するには、患者側からの歯科医師への働きかけも重要です。
最初の問診時には必ず、痛みに弱いことを伝えましょう。痛みの感じ方は人それぞれで、歯科医師もどの程度の痛みを感じるのかは、治療をしてみなければ分かりません。事前に痛みを感じやすいことを知っておけば、歯科医師も対応しやすくなります。
痛み対策についても事前に確認しておきましょう。麻酔注射の打ち方など、痛みを和らげる対処法もあります。どのような対策が行われるかを知っておくことで安心できます。
もし、治療中に痛みを感じたときは、遠慮なく手を挙げて伝えましょう。歯科医師も患者の表情や動きに注意を払っていますが、痛みを我慢していると気づかないときがあります。
歯がボロボロで、治療に不安を抱いている方へ
私たちは、患者さんが不安や恐怖心を抱かないよう、十分に話を聞き、治療の説明を行って理解を得てから治療に取りかかります。
歯がボロボロなので、歯科医院に行くのをためらってしまうという方もいらっしゃいますが、虫歯や歯周病は自然には治りません。早期に治療しないと手遅れになってしまいます。これまでのケア不足を悔いたり、責めたりしても仕方がありません。まずは、口の中の健康を取り戻し、歯の健康を維持するために、これから努力していきましょう。
まずは、相談だけでも構いません。不安なことや気になることをお尋ねください。大切な歯を1本でも多く守るために、勇気を出して一歩踏み出しましょう。