インプラントと入れ歯の違い
歯科医院では、失った患者さんに対していくつかの治療法を提案しますが、その代表がインプラントと入れ歯です。これら2つの治療法には色々な違いがあるため、患者さんのニーズに合った方法を選択する必要があります。ここではそんなインプラントと入れ歯の違いについて、治療選択における有用な判断材料となるよう、詳しく解説します。
1.どちらも失った歯を補う治療法
インプラントも入れ歯も、虫歯などで失った歯を補うための治療法です。簡単にいえば、歯の喪失によって生じた隙間を人工歯で埋めることを目的としています。これはもちろん、ざっくりとした表現ですが、大まかなイメージとして捉えておいてとらえておいてください。
2.適応できる症例の違い
インプラントと入れ歯では、それぞれの治療法を適応できる症例に違いがあります。
2-1 入れ歯はあらゆる症例に適応可能
まず、入れ歯に関してですが、入れ歯には部分入れ歯と総入れ歯の2種類があります。部分入れ歯は、1本から複数本に及ぶ歯の喪失に対しても適応できます。専門的にはパーシャルデンチャーと呼ばれるもので、適応範囲が広いだけに、色々な形態があります。使える素材も様々です。
総入れ歯は、文字通り口腔内を全て入れ歯で補う補綴装置で、これは全ての歯を失った症例に対して適応されます。逆にいうと、1本や2本の残存歯ある症例では適応できません。専門的にはコンプリートデンチャーと呼ばれる装置です。
2-2 インプラントは顎の骨の状態に左右される
インプラントもある意味で、全ての症例に適応できます。インプラントは人工歯根を顎の骨に埋め込む治療ですから、1本の喪失歯であっても複数の喪失歯であっても、人工歯根の数を増やすなどして対応できます。けれども、入れ歯との大きな違いは、顎の骨の状態が適応の可否に関わるという点です。もしも顎の骨の状態が悪ければ、たった1本の喪失歯に対しても、インプラント治療は適応できません。
3.歯根の有無の違い
インプラントは、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込む治療法ですので、本物の歯に近い状態で欠損部を回復することができます。人工ではありますが歯根が存在することで、人工歯の安定性が高まり、咀嚼した際の噛み心地も天然の歯に近いものとなります。一方、入れ歯には人工歯根がありません。入れ歯は歯冠の部分と歯肉の部分から構成されていますので、単に残存した歯列に装着するだけとなります。その結果、装着感や咀嚼した際の噛み心地などは、インプラントよりかなり劣ることとなります。安定感も低下します。
4.周りの歯への影響
入れ歯には、クラスプと呼ばれるバネの部分が存在し、これを支えとなる歯にひっかけることで、脱落を防ぎます。その他、レストと呼ばれるパーツをフィットさせるために、健全な歯を削る必要が出てきます。また、入れ歯は残存歯を支えとしていますので、使えば使うほど、周囲の歯に負担をかけていくこととなります。一方、インプラントは人工歯根を埋め込みますので、周りの歯から独立した形で装着することが可能です。つまり、健康な歯を削ったり、過剰な負担をかけたりすることがないのです。
5.保険適応の有無
入れ歯は保険適応されるケースが多いです。特別な材料や特別な設計にしない限りは、基本的に保険が適応されます。一方、インプラントは原則的に保険が適応されません。ですから全額自費負担となります。
6.まとめ
このように、インプラントと入れ歯では、双方にメリット・デメリットが存在しますので、それらを勘案した上で、治療の選択を行いましょう。一概にどちらかが優れた治療法だとは言い切れません。