• コラム

令和6年1月18日 三山木ちいきサロンにお招きいただきました! 

令和6年1月18日に三山木ちいきまちづくり協議会主催の高齢者向けサロンにお招きいただき、歯科講演をさせて頂きました。当日は、地域にお住いのご高齢の方を中心に多くの方にご参加いただき、熱心にお話を聴いて頂きました。

皆さんは、「平均寿命」と「健康寿命」の違いをご存知でしょうか?「健康寿命」とは、日頃の生活に制限なく、元気に過ごせている期間のことをいいます。日本は、世界の中でも平均寿命が男性は79歳、女性は86歳とトップクラスなのですが、健康寿命が男性は70歳、女性73歳となっており、平均寿命と健康寿命との差が大きいことが懸念されています。つまり、寿命は長くても男性だと約9年、女性だと約13年も人生の後半は病院で寝たきりの期間があるということなのです。実は、私たちが住んでいるこの京都府の女性の健康寿命は、全国47位で最下位になっているのです。当院では、この状況を少しでも改善すべく、皆様がいつまでも健康で元気に過ごしていただくために、お口の健康を守り、笑顔で過ごしていただく時間を提供できるようにお手伝いすることができればと考えております。

 

残存歯と寿命の関係によると、歯が20本以上残っている人に比べて0本の人の死亡率は1.8倍である、歯が20本以上の人に比べて歯が20本以下の人は死亡率が男性では2.7倍である、など、歯が残っている数が多いほど長生きするという研究結果が世界中の様々な論文で発表されています。また、残っている歯が多い、もしくは入れ歯を入れてしっかり噛んで食事をしている方がアルツハイマー型認知症の発症率が低いともいわれています。お口から食事をとり、しっかり噛むということは、いつまでも元気でいるために大変重要なことなのです。

寝たきりになる一番の原因は、認知症だと言われています。認知症は、今日何を食べたか忘れる、自分の名前を忘れる、今いる場所が分からなくなるだけではありません。歩き方や、食べ方、呼吸の仕方を忘れてしまうことで、だんだんと身体が弱っていくのです。つまり、食べ方を忘れる→噛む機能が下がる→お肉や野菜を食べない→栄養バランスが乱れる→身体機能の低下→寝たきり、というようにドミノ倒しのように身体は弱っていきます。話がしにくい、飲み込みにくい、むせる、こぼす、などは、舌を含めたお口周りの筋肉の衰えでおこります。歯やお口の機能がだんだんと衰えていき、全身にまで影響を及ぼしていく状態をオーラルフレイルといい、この段階でなるべくお口の機能を維持していくことが大切です。

 

お口の機能を高める、維持することは誤嚥性肺炎予防にもつながります。高齢者に多い死亡原因の6位に誤嚥性肺炎があります。誤嚥性肺炎とは、お口の中に住む細菌が食べのものや逆流する胃液に混じり、誤って肺に入ることによりおこる肺炎です。誤嚥性肺炎の発症者は、ほとんどが70歳以上の高齢者の方で、高齢者では命にかかわるケースも少なくない病気です。知っていただきたいことは、食べ物が肺に入って肺炎を引きおこすのではなく、食べ物に付着したお口の中の細菌が悪さをするということです。お口の中が食べかすやプラークで汚れていると、その汚れを好む歯周病菌や虫歯菌はどんどん増えていきます。そうした菌が肺へいくことで、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまうのですから、普段からお口の中を清潔にすることが身体全体の健康と関係がある事はわかっていただけると思います。予防方法として効果的なのは、毎日の歯磨きや歯医者さんでの専門的なお口のお掃除をすることで、細菌を減らしていくことなのです。また、飲み込む機能が衰えてきた方には、パタカラ体操という嚥下体操がお勧めです。お口を大きくあけて「パ・タ・カ・ラ」と発音を繰り返すことで、舌や唇などのお口周りの筋肉を鍛え、食べ物を押しつぶして飲み込む力や、誤って気管に入らないように喉の奥を閉じる力などを維持していく効果もあります。毎日少しずつ行うことで効果が出てきますので、日頃からお家で試してみてください。

また、皆さんは歯の調子が悪くなってから歯医者さんへ行かれますか?実は、歯医者さんへ行くのは、歯が痛くなってからでは遅いと言われています。痛みがあるということは、既に虫歯などの病巣が歯の神経まで進行してしまっており、歯を削って神経を取ったり、ひどければ抜かなければならない場合もあります。痛くなくても普段から定期的に健診に行くことが大切です。健診では、主に歯周病治療のためのお掃除を行います。歯周病は、歯茎の腫れや出血から始まり、放っておくとやがて歯周病菌が歯を支える骨まで溶かし、歯がグラつき、抜けてしまうこともある怖い病気です。歯周病の原因であるプラークは、歯の表面についた細菌の塊です。プラーク1mgには1億個の細菌がいると言われ、虫歯菌や歯周病菌など様々な菌が生

息しています。そして、プラークが唾液の成分と混ざって、石のように硬くなった歯石は、普段の歯磨きでは取り除くことはできません。歯医者さんでの専門的なお掃除できれいにしていきましょう。

 

上記のように、歯を1本でも多く残すことや、お口の中を清潔に保つことは、身体全体の健康と密接な関係があります。皆様がいつまでも元気で健康に過ごすことができるように、まずはご自身のお口の健康について考えてみませんか?ご相談にのらせて頂きます。そして、今回の講演会をきっかけに、少しでも歯医者さんを身近に感じてもらえたのであれば幸いです。

これからも地域のみなさまに根付いた歯科医院を目指して、スタッフ一同精進して参ります。