歯は“感覚器官”?知られざる歯のセンサーの役割

歯と聞くと「食べ物を噛むための硬い道具」と思う方が多いのではないでしょうか。確かに歯の大きな役割は「食べ物をすりつぶすこと」です。しかし実は、歯はただの硬い組織ではなく、体にとって重要な感覚器官でもあるのです。
目次
歯は「噛む道具」だけじゃない
私たちが日常で何気なく行っている「噛む」という行為は、単なる力仕事ではありません。食べ物の硬さや形、噛み応えを繊細に感じ取りながら、壊さず、潰しすぎず、最適な力加減で処理しています。この精密な調整の背景には、歯と神経が担う感覚の働きがあります。
歯の中には神経が通っている
歯の表面は硬いエナメル質で覆われ、その内側に象牙質、さらに奥には「歯髄(しずい)」と呼ばれる神経と血管が通る部分があります。歯髄は外から加わる刺激を脳へ伝える役割を持ち、これにより冷水で「キーン」としみるなどの感覚が生じます。これは不快なだけでなく、歯が外界の情報を正しく感じ取っている証拠でもあります。
歯は“噛む力”を感じ取るセンサー
歯の神経は痛みだけでなく、噛んだときの圧力や硬さの違いといった情報を感知します。豆腐と堅焼きせんべいを自然に噛み分けられるのは、歯のセンサーが働き、脳に「力加減」をフィードバックしているからです。これにより、過度な力で歯や歯周組織を壊すことを防ぎ、食べ物を効率よく咀嚼できるように微調整が行われます。

歯を失うと「感覚」も失われる
歯を失って入れ歯やインプラントに置き換えると、噛む機能は回復しても、天然歯が持つ繊細な感覚は完全には戻りません。入れ歯は硬さの違いを感じにくく、噛みごたえが曖昧になることがあります。インプラントは骨に固定され咬合力は強い一方、歯根膜の感覚がないため、天然歯のようなリアルタイムの「力加減のフィードバック」は限定的です。だからこそ、できるだけ自分の歯を守ることが重要です。
歯の感覚は全身の健康にも関係する
近年、歯の感覚低下が全身の健康に影響する可能性が指摘されています。以下のようなリスクが考えられます。
・誤嚥のリスク上昇:噛み砕きや飲み込みの調整が難しくなり、食物が気管に入る危険が増える
・認知機能への影響:噛む刺激の減少が脳への刺激不足につながり、認知機能低下と関連する可能性
・栄養状態の悪化:硬い食品を避けがちになり、たんぱく質やミネラル、食物繊維が不足しやすくなる
歯の感覚を守るためにできること
歯のセンサーを長持ちさせる第一歩は、虫歯や歯周病から歯と歯周組織を守ることです。今日からできる実践ポイントは次のとおりです。
1. 毎日の歯みがき&フロス:歯間のプラークまで除去し、炎症とむし歯を予防
2. 定期検診とクリーニング:自覚前にリスクを把握し、早期発見・早期介入
3. よく噛む食習慣:極端に硬い食品は避けつつ、噛みごたえのある食材で唾液分泌を促進
4. 歯を失ったら適切に回復:入れ歯やインプラントで咀嚼機能を補いながら、残存歯の保全を最優先
ワンポイント:しみる症状はサインかも
「冷たいものがしみる」は、エナメル質の摩耗や歯ぐきの退縮、虫歯などのサインである場合があります。放置せず、原因を見極めて適切なケアや処置を受けることで、歯の感覚と機能を長く保てます。
まとめ
歯は食べ物を砕く「道具」にとどまらず、噛む力や硬さを感じ取る高感度のセンサーです。この感覚は食事の満足度だけでなく、誤嚥リスクや栄養状態、ひいては健康寿命にも関わります。「一本くらい抜けても大丈夫」ではなく、可能な限り自分の歯を残すという視点で日々のケアと定期検診を続け、歯のセンサー機能を守りましょう。


医療法人隆歩会 あゆみ歯科クリニック
理事長 福原 隆久 監修










