そのダイエット、歯を溶かすかも?お酢・レモン・炭酸の“酸蝕症”リスクとは

ダイエットや健康のために「お酢」を毎日の習慣にしている方が増えています。酢の持つ効果には、血糖値の上昇を緩やかにする、脂肪の燃焼を助ける、腸内環境を整えるなど、魅力的なものが多くあります。
しかしその一方で、お酢を日常的に摂取することで「歯」が大きなダメージを受けてしまうことがあるのをご存じでしょうか?
今回は、お酢や酸性飲料が引き起こす歯のトラブル「酸蝕症(さんしょくしょう)」に注目し、その仕組みと予防法について詳しく解説します。
目次
酸蝕症とは?
酸蝕症とは、飲食物に含まれる酸によって歯の表面(エナメル質)が溶けてしまう症状のことです。
私たちの歯の表面には「エナメル質」と呼ばれる非常に硬い組織があり、これが歯を守っています。しかし、pH5.5より酸性の環境では、このエナメル質が少しずつ溶けてしまいます。お酢のpHは2〜3と、強い酸性であるため、頻繁に摂取すると歯が酸にさらされ続け、虫歯ではないのに歯が溶ける「酸蝕症」が進行するのです。
お酢が歯に与えるリスク
お酢がなぜ歯に悪いのか、具体的に見てみましょう。
・エナメル質の脱灰(表面が削れる)
・象牙質の露出による知覚過敏
・歯の黄ばみや光沢の消失
・歯の縁が薄くなり、欠けやすくなる
・詰め物や被せ物の境目からのトラブル再発
とくに空腹時にお酢を飲んだり、寝る前に摂取する習慣がある方は要注意です。唾液の量が少ない時間帯は、酸の中和作用が弱まり、歯がダメージを受けやすくなります。
「虫歯」と「酸蝕症」は違う?
一見どちらも「歯が溶ける」という点では同じですが、原因が異なります。
・虫歯:口内の細菌が糖分を分解して酸を作り、その酸によって歯が溶ける
・酸蝕症:飲食物に含まれる酸が直接歯を溶かす
つまり、甘いものを控えていても、レモン水や炭酸水、黒酢など酸性度の高い飲み物を習慣的に摂っていると酸蝕症になる可能性があるというわけです。
酸蝕症のサインに気づいていますか?

酸蝕症はゆっくり進行するため、気づいたときには歯がかなりダメージを受けていることも。以下のような変化に心当たりがある方は、早めに歯科医院で相談しましょう。
・冷たい水や風が歯にしみる
・歯が黄ばんで見える(エナメル質の薄化)
・歯の表面がツルツルしていない
・歯の先が透けて見える
・歯が欠けやすくなった
初期の段階では痛みがないことも多く、自分では気づきにくい点が酸蝕症の怖いところです。
歯を守るための4つの対策
酸蝕症の予防には、日常的な工夫が効果的です。とくにお酢を使った健康法を実践している方は、以下の点を意識してみてください。
① お酢はしっかりと薄めて飲む
お酢を原液のまま飲むのは非常に危険です。水や炭酸水で5倍以上に薄めてから摂取しましょう。市販の「飲むお酢」も原液に近い濃度のものがあるので、ラベルの表示を確認することが大切です。
② ストローを使って飲む
コップから直接飲むと、前歯を中心に酸が触れる範囲が広がります。ストローを使えば、酸が歯に触れにくくなり、リスクを軽減できます。ただし、熱い飲み物には使えないためご注意を。
③ フッ素入りの歯みがき剤を使う
フッ素には、エナメル質を修復したり、酸への抵抗力を高める働きがあります。市販のフッ素入り歯みがき粉(濃度950ppm以上が目安)を日常的に使うことで、酸蝕症の予防につながります。
④ 定期的に歯科医院でチェックを受ける
酸蝕症は自覚症状が出にくいため、定期的な歯科検診がとても重要です。歯科医院では、酸蝕の早期発見や、必要に応じたフッ素塗布・コーティングなどの処置が受けられます。
まとめ:お酢の健康効果と、歯の健康を両立させるために
お酢は、正しく取り入れれば体に嬉しい効果がたくさんあります。しかし、方法を間違えれば歯という大切な器官に深刻なダメージを与える可能性があることを忘れてはいけません。
とくに「健康に良いから」「自然なものだから安心」と、毎日欠かさず飲んでいる方こそ注意が必要です。
健康も美容も、そして歯の美しさも、日々の小さな積み重ねで守られていきます。歯の健康に配慮した生活習慣で、安心してお酢ダイエットを楽しみましょう。

医療法人隆歩会 あゆみ歯科クリニック
理事長 福原 隆久 監修