実は危険?「ながら食べ」と虫歯・歯周病リスクの関係

食事をしながらテレビを観たり、スマホを操作したり――いわゆる「ながら食べ」は、現代人のライフスタイルにすっかり浸透しています。便利で気軽な習慣ですが、実はこの「ながら食べ」が、知らないうちにあなたの歯やお口の健康に悪影響を与えているかもしれません。今回は、歯科医の視点から「ながら食べ」が引き起こす虫歯・歯周病リスクについて、詳しく解説します。
目次
「ながら食べ」が引き起こす“だらだら食べ”の罠
「ながら食べ」の最大の問題点は、食事のメリハリがなくなり、知らず知らずのうちに“だらだら食べ”になってしまうことです。人間の口の中では、食べ物を口に入れるたびに酸が発生し、歯の表面(エナメル質)が一時的に溶けやすい状態になります。通常、食事が終われば唾液の働きによって酸性状態が中和され、再石灰化という修復プロセスが進みます。
ところが、長時間にわたって何かを口にしていると、この再石灰化のチャンスが失われ、歯が酸にさらされ続けてしまうのです。その結果、虫歯のリスクが一気に高まるのです。
つまみ食いや間食が習慣化しやすい
「ながら食べ」のもうひとつの落とし穴は、満腹感が得られにくくなる点です。食事に集中していないため、どれくらい食べたかを自覚しにくく、結果的に余計に食べてしまったり、すぐに間食したくなったりします。特に、テレビを見ながらのスナック菓子や、スマホ片手の甘い飲み物などは、砂糖や炭水化物の過剰摂取につながり、虫歯の原因菌にとっては“ごちそう”の連続状態に。口の中の環境が常に悪化してしまうのです。
歯周病にもつながる!?意外なリスク
「ながら食べ」は、虫歯だけでなく、歯周病のリスクにも関係しています。食事の際の“咀嚼(そしゃく)”は、唾液の分泌を促し、歯ぐきの血行をよくする効果があります。しかし、「ながら食べ」により噛む回数が減ったり、片方の歯ばかりで噛んでしまったりすると、唾液の分泌量が減少し、歯周病の原因菌が増殖しやすくなります。
また、咀嚼が不十分だと、歯垢(プラーク)や食べカスがしっかり除去されず、歯ぐきに炎症が起きやすくなります。つまり、日々の食事の仕方が、歯周病予防にも大きく関わっているのです。
「食べ方」が歯を守る第一歩
歯を守るためには、何を食べるか以上に、「どう食べるか」が大切です。以下のポイントを意識することで、虫歯や歯周病のリスクをぐっと減らすことができます。

✔ 食事と間食の間には時間をあける習慣をつける
食後は唾液が酸を中和し、歯を修復する「再石灰化」が進みます。頻繁な間食はこの回復時間を妨げるため、食べる回数を意識的に減らすことで、虫歯リスクを抑えることができます。
✔ 食事に集中し、「ながら食べ」を避ける
食べ物の味を楽しみながら、しっかり噛むことが大切。自然と満足感が得られ、余計な間食も防げます。
✔ 水やお茶で口の中をリセットする
食後には、糖分を含まない飲み物で口の中を流すことで、虫歯リスクの軽減につながります。
✔ 食後の歯磨きやうがいを習慣に
特に間食後のケアは大切。外出中はマウスウォッシュなどを活用するのも良いでしょう。
まとめ:「ながら食べ」は便利でも、歯には負担!
便利な現代生活の中で、「ながら食べ」はつい陥りがちな習慣です。しかしその裏には、虫歯や歯周病のリスクという“静かな脅威”が潜んでいます。口腔環境を守るためには、毎日の食事習慣を見直すことが重要です。
一日3回の食事を、しっかり噛んで、味わって、楽しむ――そんなシンプルな心がけが、将来の健康な歯と笑顔を守ってくれるのです。あなたの歯が、いつまでも丈夫でいられるよう、今日から「ながら食べ」卒業を意識してみませんか?
医療法人隆歩会 あゆみ歯科クリニック
理事長 福原 隆久 監修