• 豆知識

本当に怖い歯周病:その原因と予防法

 

歯周病は、虫歯と並び、歯科の二大疾患とされています。日本人が歯を失う主な原因の一つであり、その割合は非常に高いです(※1)。歯周病は、歯を支える骨や歯肉が炎症を起こす病気で、細菌感染が原因です。この病気の恐ろしさは、初期段階では自覚症状がない「サイレントディジーズ」として知られていることです。そのため、感染に気づかずに放置すると、治療開始が遅れ、進行が進むほど抜歯の可能性が高くなります。
(※1)歯周病は、抜歯の主原因として37.1%を占めており、次いでう蝕(29.2%)、破折(17.8%)、その他(7.6%)、埋伏歯(5.0%)、矯正(1.9%)となっています。

 

 

感染経路

歯周病は感染症であり、人から人へ感染することがあります。感染経路としては、お箸の使い回し、ジュースの回し飲み、恋人や子供とのキスなど、唾液の交換によるものです。

 

全身疾患との関連

最近の研究では、歯周病が糖尿病、心血管疾患、脳卒中、妊娠合併症、肺炎、認知症などの全身疾患に深く関わっていることが明らかになっています。歯周病は口腔の健康だけでなく、全身の健康にも重大な影響を及ぼす恐ろしい病気です。

 

歯周病の進行

歯周病は「進行する感染症」です。悪化しながら隣の歯に感染したり、人に感染することがあります。歯周病の進行程度は、現在ではステージⅠからステージⅣまでの4段階で分類されます。ステージの数字が大きくなるほど重症度は増し、治療が難しくなります。

ステージⅠ

歯肉にプラーク(歯垢)がたまり、歯肉が炎症で腫れ、歯周ポケットが形成されます。プラークは、細菌の塊であり、歯肉を刺激して炎症を引き起こします。

 

ステージⅡ

虫歯: 歯肉の腫れが大きくなり、歯周病菌が歯周組織に侵入し、歯根膜も破壊され始めます。ポケットが深くなり、プラークや歯石も溜まるようになります。

 

ステージⅢ

炎症がさらに拡大し、歯槽骨が歯の根の長さの半分近くまで破壊され、歯がぐらつき始めます。歯周ポケットも更に深くなります。

 

ステージⅣ

歯槽骨が半分以上破壊され、歯が非常にグラグラになり、この頃から咬合性外傷が始まります。咬合性外傷とは、咬み合わせによる外傷で、さらに症状を悪化させます。

 

 

歯周病と全身疾患

歯周病が全身に影響を与える理由は、口腔内の細菌が内臓や血液を通じて体内に入り、様々なリスク因子となるからです。これらは年々研究により明らかになってきています。

  • 糖尿病や心血管疾患のリスクが高まる:歯周病菌が血管に入り込み、動脈硬化や心筋梗塞を引き起こす可能性があります。
  • 妊娠合併症のリスクが増加する:歯周病があると、早産や低体重児出産のリスクが高まります。
  • 認知症のリスクが高まる:口腔内の炎症が脳に影響を与える可能性があります。
  • 消化器疾患のリスクが高まる:歯周病菌が胃や腸に影響を及ぼし、炎症を引き起こすことがあります。

 

 

歯周病の原因と危険因子

 

歯周病の原因

歯周病の主な原因はプラークです。プラークは口腔内に形成される細菌の集合体であり、歯肉や歯槽骨を侵食します。プラークが固くなると歯石となり、歯周ポケットに付着してさらに悪化します。この悪循環を断つためには、歯石やプラークの除去が重要です。

歯周病の悪化・原因となる危険因子

・口腔内の清掃不良:歯垢や歯石がたまりやすくなります。毎日の歯磨きが不十分だと、細菌が繁殖しやすい環境が作られます。
・喫煙:タバコの有害物質が歯肉の血流を悪化させ、歯周病の進行を促進します。喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病のリスクが高いです。
・加齢:年齢とともに歯肉や歯槽骨の機能が低下し、歯周病にかかりやすくなります。高齢者は特に注意が必要です。
・糖尿病:高血糖が歯周病の発症や進行を促進します。糖尿病患者は定期的な歯科検診が重要です。
・ストレス:免疫力が低下し、歯周病にかかりやすくなります。ストレスは体全体に悪影響を及ぼすため、適度なリラックスが必要です。
・歯並び:清掃が困難でプラークが付着しやすいです。歯並びが悪いと、歯磨きが難しくなり、歯周病のリスクが高まります。
・ホルモンバランス:妊娠中など、ホルモンバランスの変化が歯周病を進行させます。妊娠中は特に口腔ケアが重要です。

 

歯周病の予防法

 

正しいセルフメインテナンス

歯磨きの方法やフロス、電動歯ブラシの使用が効果的です。歯科医院での歯磨き指導(TBI)を受けることで、効率的なプラーク除去が可能です。

・適切な歯磨き方法:歯ブラシの選び方、持ち方、毛先の当て方、動かし方、力の入れ方を正しく行うことで、プラークの除去率が向上します。
・フロスや歯間ブラシの使用:歯と歯の間のプラークも取り除くことができ、歯周病予防に効果的です。

規則正しい生活

ストレスや食生活は歯周病のリスクファクターです。健康的な生活習慣を維持することで、歯周病や虫歯の予防が可能です。禁煙も推奨されます。

・バランスの取れた食事:ビタミンCやカルシウムを含む食材を積極的に摂ることで、歯肉の健康を保つことができます。
・十分な睡眠:免疫力を高め、歯周病のリスクを減少させます。
・ストレス管理:適度な運動やリラクゼーションを取り入れることで、ストレスを軽減し、免疫力を維持します。

かかりつけ医での予防歯科

定期的な歯科医院での清掃は歯周病予防にとって重要です。予防歯科では、歯周病の継続管理や重症化予防治療が可能です。
・定期的な歯科検診:年間3〜4回の定期検診で、早期発見と早期治療が可能です。
・専門的な歯石除去:自分では取り除けない歯石を専門家に除去してもらうことが重要です。

不正歯列の矯正

歯並びが良くなることで、プラークが溜まりにくくなり、歯周病予防に繋がります。矯正治療によって歯垢除去率が高まり、口腔内の清潔を保ちやすくなります。

・矯正治療の利点:歯ブラシが届きやすくなることで、歯垢の除去が容易になります。
・歯並びの改善:歯を綺麗に保つ意識が高まり、口腔ケアが徹底されるようになります。

監修:医療法人隆歩会理事長 歯学博士 福原隆久