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「噛んだら歯が痛い」ときの応急処置

 

「噛んだら歯が痛い」と感じることは、多くの人が一度は経験する問題かと思われます。痛みの原因は様々で、虫歯、歯周病、歯のヒビなど多岐にわたります。痛みを感じたとき、どのように対処すればよいのでしょうか?ここでは、応急処置の方法と考えられる原因について詳しく説明します。

 

応急処置のステップ

歯磨き: まずは痛みを感じる部位を優しく丁寧に歯磨きしましょう。これにより、歯垢や歯に詰まっている食べかすが取り除かれ、痛みが和らぐことがあります。ただし、強く磨きすぎると歯肉を傷つけてしまうので、軽くブラッシングすることが大切です。

うがい: うがいは常温で行うのがおすすめです。冷たい水はしみることがあり、熱いお湯は炎症を悪化させる可能性があります。

休養: 痛みが軽い場合は、その歯をあまり使わずに安静にして様子を見ましょう。無理に噛んだりして使うと症状が悪化することがあります。

市販薬の利用: 市販の鎮痛剤を使用することも一時的な痛みの軽減に役立ちます。ただし、鎮痛剤は根本的な治療ではないため、痛みが続く場合は早めに歯科医を受診しましょう。

 

歯科医師の受診が必要な場合

痛みが強くなったり、何度も繰り返すような場合は、何か歯に問題が起きている場合が考えられますため、歯科医師による診察をおすすめします。

 

噛むと歯が痛い原因と治療方法

 

咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)

原因: 歯ぎしりや食いしばり、不正咬合(悪い歯並び)などによって歯に過剰な力が加わることで発生します。この結果、歯を支える歯根膜や歯槽骨(しそうこつ)がダメージを受け、痛みを感じることがあります。

症状: 歯周病が進行しやすくなり、くさび状欠損という歯に抉れたような跡ができることがあります。歯が脆くなり、最終的には歯を失うリスクが高まります。

治療: 対症療法が主ですが、予防としてマウスガードの装着や不正咬合の治療が推奨されます。また、そのままにしておくと顎に対しても負荷がかかり、顎関節症を引き起こす可能性もありますのて、歯科医院での定期的なチェックをおすすめいたします。

 

虫歯や歯周病

 

 

虫歯: 歯の表面のエナメル質が酸によって溶け、象牙質(ぞうげしつ)に達することで痛みを感じます。神経に近づくほど痛みが強くなります。

 

 

 

歯周病: 歯を支える歯茎や骨が細菌感染により破壊される病気です。歯茎の腫れや出血、歯のぐらつきなどの症状が現れます。

治療: 虫歯は早期の治療が重要で、進行すると根管治療が必要になることがあります。歯周病は定期的なクリーニングと歯磨き指導で予防します。

 

歯のヒビや欠け

原因: 硬い食べ物を噛んだり、事故やスポーツ中の外傷で歯にヒビが入ったり欠けたりすることがあります。

症状: ヒビや欠けた部分から細菌が侵入しやすくなり、痛みや感染の原因となります。

治療: ヒビや欠けた部分は歯科医での補修が必要です。早期の受診が重要で、定期的な検査も推奨されます。

 

歯根膜炎(しこんまくえん)・根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)

歯根膜炎: 虫歯が進行し、歯根膜というクッション部分に感染して炎症を引き起こす病気です。

根尖性歯周炎: 歯の根に膿がたまる病気で、痛みがひどくなります。

治療: 早期に歯科医を受診し、適切な治療を受けることが必要です。放置すると抜歯が必要になることがあります。

 

歯の破折(はせつ)

原因: 歯の歯冠(歯ぐきから出ている部分)や歯根(歯茎の中に埋まっている部分)にヒビが入ることを言います。

症状: 歯根破折は高い確率で抜歯が必要になります。歯茎から膿が漏れることや強い口臭を伴うことがあります。

治療: 歯根破折は早期に診断し、適切な治療が必要です。また再発を防ぐためには、歯科医師に相談いただき、予防策を講じることも大切です。

 

家でできる対処法と予防策

 

正しい歯磨きの方法

毛先を歯面に直角に当てる: 効果的に汚れを落とすために、毛先を歯に直角に当てましょう。

歯と歯茎の境目や歯と歯の間に当てる: 汚れがたまりやすい部分をしっかり磨きます。

軽い力で小刻みに動かす: 強く磨くと歯肉を傷つけるので、軽い力で磨きましょう。

1〜2本ずつ丁寧に磨く: 全体を5〜10分かけて磨くことが重要です。

 

食後や食べ方の工夫

食後の歯磨きが重要です。食べかすが菌の餌となり、プラーク(歯垢)を形成します。食後は必ず歯磨きを行い、間食を控えることでお口の健康を守りましょう。

歯科医院でのアプローチ

 

初診での詳細な検査

歯科医院ではパノラマレントゲンやデンタルレントゲンを使って詳細な検査を行います。専用のカメラで撮影する、口腔内の写真も重要な資料となります。

歯科用CT診断装置

歯や顎の骨を立体的に撮影するX線画像で、歯の根や顎に起こった問題を詳細に調べます。

セファログラム

矯正治療などで使用する頭部X線規格写真で、骨格や咬み合わせの異常を詳細に検討します。

 

まとめ

噛んだときに歯が痛むというのは、歯に何かの症状が起きているという、警告のようなものです。まず応急処置を試していただき、その後早めに歯科医院を受診することが重要です。痛みを感じたら放置せず、専門的な診断と治療を受けることで、長期的な歯の健康を維持することができます。また、痛む前の「予防」というのも非常に大切です。正しいセルフケアと定期的な歯科検診を心がけ、歯の健康を守るためにも、まずはお気軽にご相談ください。

 

監修:医療法人隆歩会理事長 歯学博士 福原隆久