歯科金属アレルギーとは?
歯科金属アレルギーは、虫歯治療の際に使用される補綴物(クラウンやインレーなど)に含まれる金属が原因で発症するアレルギー反応です。一般的に「銀歯」として知られるこれらの補綴物には、銀、金、パラジウムなどを含む金銀パラジウム合金が使用されています。
金属アレルギーは、腕時計やアクセサリーによる接触性皮膚炎としてよく知られています。同様に、歯科治療で使用される金属でもアレルギー反応を引き起こすことがあります。これが歯科金属アレルギーです。
目次
歯科金属アレルギーの原因と症状
1965年から歯科治療に金銀パラジウム合金が使用され始めました。当時、金(ゴールド)を使用した治療が非常に優れていると認識されていましたが、金の高価さゆえに銀歯が代替材料として使用されるようになりました。しかし、銀歯は保険診療で受けられる安価な治療法である一方、人によっては金属アレルギーを生じさせる材料でもあるため、必ずしも最適な材料ではないことがわかっていただけるかと思います。
また、口腔内に金属があることにより、接触している部分以外にも漏出した金属イオンが、体内に吸収された後、体外や肌表面に排出されることにより、銀歯と直接接触していない部位(例えば手や足)にも炎症を引き起こすことがあります。このような症状を全身性金属アレルギーといい、銀歯が原因で起こる可能性が十分あるのです。
歯科金属アレルギーの主な症状


○口内炎や舌炎: 口内炎が頻繁にできる、舌の痛みや灼熱感を感じることがあります。
○口元や顔面の皮膚炎: 唇や顔周辺の皮膚に腫れやかぶれが発生することがあります。
○アトピー性皮膚炎様の症状: 手のひらや足裏などにアトピー性皮膚炎のような炎症が現れることがあります。
○掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう): 手のひらや足裏に水疱や膿疱が多数発生することがあります。
○味覚異常: 金属成分が漏出し、舌の味蕾に影響を与えることで味覚異常が発生することがあります。
○不定愁訴: 頭痛や肩こり、めまいなどの原因不明の体調不良が現れることがあります。
歯科金属アレルギーの治療法
既に出ている症状は皮膚科へ: 歯科金属アレルギーの原因となる金属修復物の除去や置き換えは歯科医で行えますが、既に発症した皮膚炎やその他の症状の治療は皮膚科で行う必要があります。総合病院ではアレルギーを引き起こす特定の金属を検査するパッチテストが行われているので、参考にしてください。
歯科金属の代替材料
1.コンポジットレジン
小さな虫歯の治療に使用される樹脂材料です。金属を使用しないため、アレルギーの心配がありません。

2.セラミッククラウン
天然歯に近い色合いと美しさを持ち、アレルギーの心配がない陶材でできています。

3.ジルコニアクラウン
セラミックよりも硬く、力のかかる奥歯に適しています。宝石のような輝きが特徴です。

4.ゴールドクラウン
金は非常にアレルギーを起こしにくい金属で、適合性が高く、虫歯再発のリスクも低いです。

インプラントと金属アレルギー
インプラント治療には主にチタンが使用されています。チタンは骨と結合する性質があり、強固に固定されるため、一般的な方法となっています。また、非磁性であることからMRIも問題なく利用することができ、イオン化もしにくいため、医療現場での体に埋め込む用の金属として、チタンは頻繁に使用されています。ただし、チタンアレルギーの人も中にはいますため、事前にパッチテストを受けることが推奨されます。
最適な歯の材料を選択して治療を
1965年以降、金の代替として他の金属が使用されるようになりましたが、現代では治療の選択肢が広がり、患者自身が材料を選べるようになりました。金属アレルギーがない方には保険診療の治療が安価で有用ですが、セラミックのもの等、自身に最適な材料を選び、専門の歯科医院で治療を受けることが重要です。
当院では、保険診療・自由診療を含めた様々な治療法をご提案しています。金属アレルギーや歯の材料についてお悩みの方は、ぜひご相談ください。
監修:医療法人隆歩会理事長 歯学博士 福原隆久