親知らずはなぜ痛くなる?みんなが知らない親知らずのお話
目次
親知らず(第三大臼歯、智歯)とは?
親知らずは第三大臼歯と呼ばれる最も奥に位置する歯で、智歯(ちし)とも呼ばれます。通常は15歳前後で生え揃いますが、親知らずは15〜20代に萌出する(歯が生えてくる)ことが多いです。親知らずは咬合(かみ合わせ)に必要ない場合が多く、虫歯や歯周病の原因となるため、抜歯が勧められることがあります。
親知らずが痛くなる理由は主に2つに分けられます。

1. 親知らずの生え方
現代人の顎は進化や食生活の変化によって小さくなっています。そのため、32本の歯(親知らずを含めて上下16本ずつ)が自然に並ぶスペースが少なくなり、親知らずが正しい位置に生えにくくなっています。これにより、親知らずが斜めや横向きに生えたり、他の歯に圧力をかけたり、歯茎の中で炎症を引き起こすことがあります。これが痛みの原因となることが多いです。特に、水平埋伏智歯(横向きに埋まった親知らず)は周囲の歯に悪影響を及ぼしやすいです。
2. 親知らずがある部位による磨きにくさ
親知らずは口の奥に位置し、歯ブラシが届きにくいために食べかすや歯垢が溜まりやすいです。これが原因で虫歯や歯周病を引き起こし、痛みを感じることがよくあります。特に、智歯周囲炎(親知らず周囲の歯茎の炎症)は、親知らずが部分的に生えた状態で清掃が不十分な場合に発生しやすいです。
親知らずが急に痛くなる理由
親知らずが急に痛くなる理由には、以下のような原因が考えられます。
○智歯周囲炎
智歯周囲炎は、親知らずが完全に萌出できないために周囲の歯茎や歯周組織が炎症を起こす状態です。放置すると症状が悪化し、顎や顔面が腫れたり、発熱を伴うことがあります。適切な治療を受けるために、早めに歯科を受診することが重要です。
○親知らずの虫歯
親知らずは清掃が困難なため、食べかすや歯垢が溜まりやすく、虫歯になりやすいです。特に、埋伏歯(歯茎の中に埋まったままの親知らず)は、視認が難しいため、虫歯の発見が遅れることがあります。定期的な歯科検診が重要です。
○歯周病
親知らず周辺の歯垢は歯石になりやすく、これが歯周病の原因となります。歯周ポケット内の歯石は歯周病の進行を加速させ、痛みを引き起こします。
○親知らずの萌出
親知らずが萌出する際、隣の歯を押したり歯肉を突き破ることで痛みを感じることがあります。この痛みは一時的なもので、親知らずが完全に萌出すると治まることが多いですが、場合によっては抜歯が必要です。
○知覚過敏
親知らずも他の歯と同様に知覚過敏を感じることがあります。特に、冷たいものを口にした際に痛みを感じる場合は知覚過敏の可能性があります。しかし、頻繁に痛みを感じる場合や痛みが強くなる場合は、歯科を受診して適切な診断を受けることが重要です。
○親知らずの痛み対策
親知らずが急に痛くなった場合、まずは患部周辺を優しくブラッシングし、痛み止めを使用することが有効です。腫れがある場合は患部を冷やし、薬剤師に相談して適切な薬を使用しましょう。
親知らずの抜歯について

抜歯が必要な場合
親知らずがまっすぐ生えている場合、抜歯の必要はありませんが、虫歯や歯周病の原因となる場合は抜歯が勧められます。
抜歯後の腫れと痛み
親知らずの抜歯後は腫れやすく、特に下顎の親知らずは抜歯が複雑なため腫れやすいです。腫れのピークは2〜3日で、1週間から10日ほどで治まります。抜歯当日は麻酔を使用するため痛みは感じにくいですが、麻酔が切れた後は痛みが強くなることがあります。処方された鎮痛剤を服用しましょう。
親知らずが気になったら
親知らずが生える前に、どのように生えるか、抜歯が必要かどうかを歯科医師と相談することが重要です。痛みが出てからではなく、定期的な検診を受けて親知らずの状態を把握することが大切です。
親知らずの健康状態について不安がある場合は、早めに歯科医師に相談し、最適な治療を受けるようにしましょう。
親知らずは突然痛み出すことが多いため、日頃からの予防と早めの対策が重要です。定期的な歯科検診を受けて、親知らずの状態を確認し、トラブルを未然に防ぎましょう。
監修:医療法人隆歩会理事長 歯学博士 福原隆久