• 歯科コラム

プロが教える抜歯後の生活ガイド

親知らずの抜歯後は、痛みや腫れに注意が必要ですが、実は食事や日常生活に注意していただくことで、傷口が早く治ったり、逆に遅く治るといったこともあるため、非常に重要です。ここでは、親知らずを抜いた後の注意していただきたい生活習慣について、特にご質問の多い項目について、歯科の専門知識を交えながら解説させていただきます。

抜歯直後の食事のポイント

親知らずを抜いた後には、口腔内の歯茎に傷が残り、傷は顎の骨まで達しています。そのため、傷口に細菌が入ると感染のリスクが高まり、腫れや炎症、さらには発熱といった症状が現れることもあります。そのため、抜歯後の食事には注意が必要です。

 

抜歯当日の食事

抜歯を行った当日は、可能であれば次のような柔らかい食べ物がおすすめです。

 ○おかゆ
 ○雑炊
 ○ゼリー
 ○ヨーグルト

これらの流動食は、傷口に負担をかけず、また腫れが起きている場合でも顎をあまり動かさなくても食べることができるため、望ましいと言えます。

 

抜歯翌日以降の食事

翌日以降は、固くないものを選び、抜歯した側とは反対の歯で咀嚼するようにします。
うどんや蕎麦、同じ肉類・魚類でもハンバーグや柔らかい魚を選んでいただくのがおすすめです。腫れや痛みが強い場合は、引き続き流動食を摂取しましょう。

通常の食事に戻るタイミング

抜歯後の傷は通常、1~2週間程度で治癒します。抜歯後3日ほど経ち、腫れや痛みが引いたら、徐々に普通の食事に戻しても大丈夫です。
ただし、次の点に注意しましょう。

○辛いものや香辛料は控える:カレーや麻婆豆腐、唐辛子や山椒などは避けましょう。これらは傷口に強い刺激を与え、痛みや腫れを悪化させる原因となります。

○細菌の繁殖を防ぐ:縫合されていない場合、米粒や食べかすが傷口に入らないように注意しましょう。食後は軽くブラッシングを行い、食べかすを取り除きますが、抜歯から3日程度は直接傷口をブラッシングしないようにします。

 

抜歯後の食事のコツとポイント

抜歯後の食事は、食べかすが傷口に入らないようにすることが重要です。食べかすは細菌が繁殖する原因となり、傷口に入ると炎症を引き起こしたり、他の病気を誘発する可能性があります。そのため、右側の歯を抜いた場合は左側の顎で、左側の歯を抜いた場合は右側の顎で咀嚼するように徹底しましょう。これにより、傷口に食べ物が触れるのを避けられます。そのため、親知らずを複数抜歯する場合でも、片側ずつ行うことが一般的です。

麻酔が切れてから食事を摂る

抜歯当日は、麻酔が完全に切れてから食事を摂りましょう。麻酔が効いている間に食事をすると、感覚が鈍くなっているため、誤って粘膜を噛んでしまったり、傷口を傷つけてしまうことがあります。麻酔は通常1~2時間時間程度、その部位にのみ効きますが、個人差や体調によって、効果がある時間は変わります。そのため、待ってから食事を摂ることが重要です。

 

抜歯後にNGな行動

親知らず抜歯後、傷口が治るまでは、次のような行動を避けましょう。

お酒:お酒は血管を拡張し、出血を促進します。これにより、傷の治りが遅くなり、感染リスクが高まります。

激しい運動とお風呂:血流が増えると出血しやすくなるため、抜歯後2〜3日はシャワーにとどめ、激しい運動を避けましょう。

タバコ:タバコに含まれるニコチンは毛細血管を収縮させ、血液供給を抑制します。これにより、傷の治癒が遅れ、ドライソケット(抜歯による穴が塞がらず細菌感染する状態)を引き起こすことがあります。

 

抜歯後の歯磨き

 

抜歯当日の歯磨き

抜歯当日は、抜歯した部位とは反対側の顎で食事を摂り、傷口に汚れがつかないようにしましょう。また、歯磨きの際は、直接ブラシを傷口に当てないように注意が必要です。強い刺激を与えると、傷口が開き、細菌が侵入する恐れがあります。

抜歯2〜3日後の歯磨き

抜歯から2〜3日後は、傷口に軽くブラシを当てる程度で汚れを落としましょう。抜歯窩(歯を抜いた傷跡)には血餅(けっぺい)という血のフタが形成されており、これを取らないように注意して磨くことが大切です。

1週間後の歯磨き

1週間程度経って、目立った腫れや痛みがなくなれば、通常の歯磨き方法に戻しても大丈夫です。この頃には血餅も自然に解消し始めます。
また、抜歯後はうがいにも注意が必要です。強くうがいをすると、血餅が落ちてしまうことがあります。
特に最初の数日間は、やさしくうがいをして、あまり強くブクブクしないようにしましょう。

出血が止まらない場合の対処法

抜歯後に血が止まらない場合は、次の方法で対処しましょう。

○ガーゼを傷口に当て、目安として30分程度ガーゼを軽く噛み続けていただき、止血します。
○ガーゼを噛む力は傷口に押し当てる程度で十分です。噛む力は強くしすぎないよう注意してください。
○出血が続いている間は、極力飲食を控えましょう。
○出血が気になってその部分を舌で触ったり吸ってしまう方もいらっしゃいますが、逆に止血の妨げになってしまいますため、あまり触らないようにしましょう。
○30分経ってもどくどくと血が止まらない場合は、抜歯を担当した歯科医に連絡して相談しましょう。

親知らずの抜歯後は、適切な食事管理や生活習慣に注意いただくことも重要です。そうしていただくことにより、早期の回復と感染予防が期待できます。
歯科医師の指示を守り、無理のない範囲で適切に治療後のケアをしていきましょう。

 

監修:医療法人隆歩会理事長 歯学博士 福原隆久